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立ち退き料の相場と正当事由|大家10年の本音

立ち退き料の現実——大家は老朽化だけでは追い出せない。正当事由と立退料を大家10年が解説 不動産投資

2026年に入ってからも「大家から急に出ていってほしいと言われた」「老朽化を理由に立ち退きを迫られている」という相談が、私のもとに後を絶ちません。借地借家法のルール自体は昔から変わっていませんが、相談に来る方の多くが同じ誤解を抱えています。先に結論からお伝えします。

私は外資系カード会社で営業を10年以上、そして関東と関西に1棟ずつアパートを持つ大家を10年続けてきました。立ち退き・更新拒絶・滞納退去——大家として何度もこのテーブルに座ってきた側の人間です。立ち退き料の記事は弁護士・税理士・ハウスメーカー・不動産ポータルばかりが書いていますが、彼らが書けないことがあります。「揉める前の現場で、大家が実際にどう考え、いくら積むのか」という本音です。この記事は何も売りません。借りている側にも、貸している側にも、大家10年の立場から正直に橋渡しします。

結論:大家は「老朽化・自己利用」だけでは簡単に追い出せない

まず、最も大事な答えを先に置きます。借りている方も、貸している方も、ここだけ押さえれば交渉の土俵に立てます。

この記事の結論(先に要点)

  • 大家は一方的に退去時期を決められない。「来年出ていってほしい」と言われても、借主が納得しなければ法律上は出る義務はありません。
  • 「老朽化だから」「家族が住むから」だけでは正当事由として弱い。建物の危険性や建替えの必要性など、総合的な事情がそろって初めて認められます(借地借家法28条)。
  • 立ち退き料に法律で決まった相場はない。「家賃◯ヶ月分」という単一の答えはなく、移転実費+迷惑料などを基に交渉で決まります。
  • 立ち退き料を払えば必ず出てもらえる、わけでもない。立ち退き料は正当事由を補う要素であって、お金で全部解決できるものではありません。
  • 借主は言われるままサインしないこと。大家は「老朽化=追い出せる」という思い込みを捨てること。両方に必要なのは、感情でなく事実の確認です。

「大家に言われたから出ないといけない」と思い込んでいる借主の方、そして「自分の物件なんだから老朽化を理由に出せるはず」と考えている大家の方——どちらも、ここから先を読むと景色が変わるはずです。私自身、大家になりたての頃は後者の誤解をしていました。

大家は一方的に退去させられるのか?借地借家法28条「正当事由」の現実

先日、あるオンライン相談でこんな事例を耳にしました。築40年ほどのアパートに長く住んでいる借主が、更新のタイミングで大家から「1年後に契約を終わりにしたい。娘が教室を開く予定なので」と切り出された、というものです。借主は「もう出るしかないのか」と肩を落としていました。あなたが同じ立場なら、どう感じるでしょうか。

結論から言えば、この大家の申し出だけで借主が出ていく義務は生じません。なぜなら、大家側が更新を拒んだり解約を申し入れたりするには、借地借家法28条の「正当事由」が必要だからです。そしてこの正当事由は、大家の都合だけで簡単に認められるものではありません。

条文では、正当事由の有無を次の5つの事情を総合的に考慮して判断すると定められています。

借地借家法28条が考慮する5つの事情

  1. 貸主・借主双方が建物の使用を必要とする事情(これが主たる要素)
  2. 賃貸借に関する従前の経過(これまでの契約の経緯)
  3. 建物の利用状況
  4. 建物の現況(老朽化の程度など)
  5. 大家が申し出た立ち退き料(条文上は「財産上の給付」)

注目してほしいのは、立ち退き料が5番目の補完的な要素でしかない点です。主役はあくまで「双方が建物をどれだけ必要としているか」。先ほどの事例で言えば、「娘が教室を開く」という大家側の必要性と、「長年そこで生活してきた」という借主側の必要性が天秤にかけられます。借主の生活基盤が確立している場合、大家側の事情がよほど切実でない限り、正当事由は簡単には認められません。

大家は「都合」だけでは追い出せない

正当事由は天秤。足りない分を“立退料”で補う

大家の事情

老朽化・自己利用
(これだけでは軽い)

借主の生活基盤

住み続ける権利は重い

大家の事情 + 立退料 = はじめて釣り合う

正当事由が足りないと、いくら「自分が使う」でも退去は通らない

大家を10年やってきた私の本音を言えば、「自分の物件だから自由にできる」という感覚は、貸した瞬間に手放さなければなりません。貸すというのは、その建物を使う権利の一部を相手に渡すこと。日本の借地借家法は、住まいを失う借主を強く守る方向で作られています。ここを誤解したまま強気に出ると、後で痛い目を見るのは大家のほうです。

「老朽化だから出ていって」が通りにくい理由

立ち退きを切り出す大家が最もよく使う理由が「建物が古くなったから」です。私も大家になりたての頃、「築年数が経てば老朽化を理由に建て替えできる」と漠然と思っていました。ところが、これは正当事由としてはかなり弱いのが実務の現実です。

裁判例の傾向を見ると、「古いから」というだけでは足りず、倒壊の危険が現実に高く、建て替えの必要性が強いという段階まで求められます。耐震診断の結果が危険水準であるとか、具体的な損傷が進行しているといった事情がなければ、「まだ住める建物を、大家の都合で壊したいだけ」と評価されかねません。

「家族が使うから」という自己使用の理由も同じです。「娘が住みたい」「自分が戻りたい」という事情は一要素にはなりますが、それだけで認められることは通常難しい。借主側の「ここに住み続けたい」という必要性と比べて、大家側の必要性が明らかに上回るかどうかが問われます。

大家の本音:「老朽化」は口にすると強そうに聞こえますが、いざ法的に争うと拍子抜けするほど弱い。だからこそ現場では、足りない正当事由を立ち退き料で埋めるという発想になります。「古いから無料で出てもらう」はまず通らない、と肝に銘じておくべきです。

逆に、借りている側がこれを知らないと、「老朽化だから仕方ない」と言われて泣き寝入りしてしまいます。古い建物だからといって、無条件に、しかも無償で出ていく必要はありません。まずは「正当事由はあるのか」「立ち退き料の話は出ているのか」を冷静に確認することです。

更新拒絶・解約は「いつまでに」通知が必要か

「来月出ていって」と言われても、それが有効な通知になるとは限りません。借地借家法は、大家が契約を終わらせるための通知のタイミングも定めています。ここは契約の種類によって扱いが分かれるので、混同しないことが大切です。

契約の種類 大家からの通知ルール 根拠
期間の定めがある契約(一般的な2年契約など) 更新を拒むなら、満了の1年前から6か月前までの間に「更新しない」と通知が必要 26条1項
期間の定めがない契約 大家の解約申入れから6か月経過すると契約が終了 27条1項

ここで注意したいのは、「1年前〜6か月前」は更新拒絶(26条)の話で、「6か月で終了」は解約申入れ(27条)の話だという点です。よく混ざりますが、別のルールです。そして何より重要なのは——この通知をしても、28条の正当事由がなければ効力を持たないということ。通知期間を守っただけで自動的に出ていってもらえるわけではありません。正当事由がなければ、更新拒絶は無効となり、契約は法律上そのまま更新(法定更新)されます。

借主側からすると、「通知が来た=出なければならない」ではない、ということです。通知のタイミングと正当事由、この2つの関門を大家がクリアして初めて、退去の話が現実味を帯びます。

立ち退き料の「相場」の正体——法定でなく、交渉で決まる

「立ち退き料っていくらが普通なの?」——これが最も多い質問です。先に身も蓋もない答えを言うと、法律で決まった相場はありません。立ち退き料は法律上の支払義務として定められたものではなく、明確な法的基準もない。当事者の交渉と個別事情で決まります。「家賃◯ヶ月分」という単一の数字を断定する記事を見かけたら、それは目安を相場のように語っているだけだと思ってください。

では何もわからないのかというと、そうではありません。実務では、立ち退き料はおおむね「移転にかかる実費」+「迷惑料(生活を乱されることへの補償)」を土台に組み立てられます。営業を10年やってきた感覚で言えば、ここから先は完全に交渉の世界です。下の表は、あくまで「目安・一例」として参考にしてください。あなたのケースに当てはまる保証はありません。

立ち退き料は「積み上げ」で決まる

家賃◯ヶ月分という固定相場はない

① 移転実費 | 引越・敷金礼金・仲介手数料

② 迷惑料 | 生活を乱される補償

③ 営業補償 | 店舗・事務所のみ加わる
= 立ち退き料の目安 | 最終額は交渉で決まる(法定相場なし)
物件タイプ よく挙がる目安(一例) 主な中身
居住用(アパート・マンション) 家賃の数か月〜1年程度が挙がることも 引越費用・敷金礼金・仲介手数料・迷惑料
事務所 家賃の6か月〜1年程度が挙がることも 移転費用・原状回復・営業上の支障
店舗 家賃の1〜3年分、時に数千万円規模になる例も 移転費用・借家権・営業補償(売上への影響)

※上記はあくまで一例です。立ち退き料に法定の相場はなく、立地・残存契約期間・代替物件の有無・借主の事情などで大きく変動します。「これがあなたの相場」と断定できる数字は存在しません。

では、現場で金額を本当に左右しているのは何か。営業の言葉で言えば、双方のBATNA(交渉が決裂したら、それぞれどうなるか)です。大家からすれば「出てもらえないと建替えも売却も進まない」、借主からすれば「ここを出たら同じ条件の家が見つからない」。この力関係で金額は動きます。具体的には、次のような変数が効いてきます。

立ち退き料が動く「本当の変数」

  • 大家の正当事由の強さ:強ければ大家は強気に、弱ければお金で埋める必要が増す
  • 引越し・移転の実コスト:敷金礼金・仲介手数料・引越業者・什器移設など
  • 代替物件の探しやすさ:同条件の物件が近隣にあるか、希少か
  • 借主の生活・営業の事情:高齢・店舗の常連客・通学通勤など、移れない事情の重さ
  • 大家側の時間的切迫度:早く出てほしいほど、上乗せして円満解決を選ぶことが多い

大家の本音をもう一つ明かすと、正当事由が弱い案件では「揉めて訴訟で何年も争うくらいなら、相場感より少し上乗せして早く穏便に出てもらったほうが、トータルでは安い」と判断する場面が実際にあります。借主側がこれを知っていれば、卑屈になる必要はないわけです。一方、正当事由がしっかりある案件では、大家は当然強気に出ます。だからこそ「自分のケースで大家の正当事由は強いのか弱いのか」を見極めることが、双方にとって交渉の出発点になります。

立ち退き料がもらえない・減るケース

「立ち退きと言われたら必ずお金がもらえる」と思っている方もいますが、そうではありません。借主側の事情によっては、立ち退き料が出ない、あるいは大幅に減るケースがあります。大家として、これは正直にお伝えしておきます。

立ち退き料が出にくい・減りやすい主なケース

  • 定期借家契約:あらかじめ「期間満了で終了」と決めた契約。期間満了による退去では、原則として立ち退き料は発生しません(大家側から中途解約を求める場合など、例外的に金銭が動くこともあります)。
  • 家賃滞納など契約違反がある:借主側に明確な債務不履行がある場合、大家は契約解除を主張でき、立ち退き料の前提が崩れます。
  • 借主の自己都合での退去:自分から出ていくなら、当然ながら大家が立ち退き料を払う理由はありません。
  • 建物が災害などで倒壊・滅失した:建物そのものが失われれば、賃貸借契約自体が終了します。

特に家賃滞納は、立ち退き料の話を一変させます。借主側に滞納という落ち度がある場合、大家は「立ち退き料を払って出てもらう」のではなく「契約違反による解除」というルートを取れるからです。ただし、1〜2か月の一時的な滞納だけで即解除できるわけではありません。裁判例では「貸主と借主の信頼関係が壊れたといえる程度」——目安として概ね3か月以上の滞納——に至って初めて解除が認められやすくなります。滞納が続けば、最終的に明渡しの訴訟まで進むこともあります。このあたりの実際の流れは、家賃滞納で訴訟になる場合の手順で詳しく整理しています。立ち退きを切り出された借主の方も、まず自分の契約状況に落ち度がないかを確認しておくと安心です。

逆に言えば、定期借家でもなく、滞納もなく、自分から出ると言ったわけでもないなら——大家都合の立ち退きで、あなたが何の補償もなく出ていく必要は、基本的にありません。

立ち退き料にかかる税金(受け取る側・支払う側)

意外と見落とされがちなのが税金です。「立ち退き料は一時所得だから50万円まで非課税」と単純化している説明をよく見ますが、これは不正確です。立ち退き料は中身によって税務上の区分が変わります。国税庁の公式な扱いを、受け取る側・支払う側それぞれで整理します。

借主が「受け取る」とき(国税庁No.3155)

立ち退き料の中身 税務上の区分
家屋の明渡しで消滅する権利の対価(資産が消える分の補償) 譲渡所得
立ち退きに伴う事業の休業などの補填(店舗の休業補償など) 事業所得など
上記以外(引越費用・迷惑料などその他の性格) 一時所得

つまり「立ち退き料=必ず一時所得」ではなく、権利消滅の対価は譲渡所得、事業の補填は事業所得などになります。受け取った立ち退き料は、この区分ごとに分けて申告するのが正確です。なお「その他」に当たる部分も、業務に関連する性質のものは事業所得・雑所得になることがあり、最終的な区分は中身次第です。

大家が「支払う」とき(国税庁No.1382)

支払いの目的 税務上の区分
物件を売却するために借主に出てもらう 譲渡費用(譲渡所得の計算上控除)
賃貸経営を続けるために借主を立ち退かせる 不動産所得の必要経費
新たに取得した不動産の使用者を退去させる その不動産の取得費・取得価額

大家として実感するのは、「売却のために払う立ち退き料は譲渡費用に算入できる」という一点が地味に効くことです。出口で物件を売る前提なら、立ち退き料は完全な持ち出しではなく、税務上は売却コストの一部として扱える可能性がある。立ち退き交渉のコストを総額で見積もるときは、ここまで含めて考えるのが現実的です。なお、個別の税務判断は税理士への確認をおすすめします。区分の当てはめはケースごとに微妙な判断を伴います。

立ち退きを切り出されたら/切り出すなら——交渉の進め方

ここまで読んだあなたは、もう「言われるまま」ではないはずです。借りている側・貸している側、それぞれの動き方を整理します。

借りている側:泣き寝入りしないための4つの鉄則

  1. その場でサインしない・口約束で退去日を決めない。「わかりました」と言った瞬間に合意とみなされかねません。一度持ち帰る。
  2. 正当事由と立ち退き料の有無を確認する。「なぜ出る必要があるのか」「立ち退き料はいくらか」を書面で求める。
  3. 不利な条項に注意する。合意書に「立ち退き料なしで〇月までに退去」「以後一切請求しない」などの条項がないか、サインの前に一つずつ確認する。
  4. 金額や条件で揉めそうなら専門家へ。立ち退き交渉は弁護士、税金の扱いは税理士。早めの相談が結局は安く済みます。

立ち退きを切り出されたら(借りている側)

1

その場でサインしない

「わかりました」も合意とみなされる→一度持ち帰る

2

正当事由と立退料を書面で確認

「なぜ出る必要が?」「いくらか」を文書で求める

3

合意書の不利な条項をチェック

「立退料なしで退去」「以後請求しない」に注意

4

揉めそうなら専門家へ

交渉=弁護士/税金=税理士。早い相談が結局安い

通知が来た=出なければならない、ではない

貸している側:揉める前に考えておくこと

大家側にも本音で助言します。「弁護士を入れて法的に押し切る」のは、聞こえはいいですが、実際には双方の感情がこじれ、時間も費用もかさみ、円満退去より高くつくことが少なくありません。私が現場で学んだのは、揉める前にいくら積めば穏便に出てもらえるかを先に見積もるほうが、結果的に総コストが下がるということです。立ち退き料・原状回復・空室期間・場合によっては訴訟費用まで、総額でいくら見ておくべきかを最初に把握しておきましょう。

立ち退きと並んで大家を悩ませるのが退去時の費用トラブルです。原状回復をめぐって借主と揉めると、それ自体が長期化の火種になります。何が大家負担で何が借主負担かを整理した退去費用のぼったくりの真実も、合わせて押さえておくと交渉がスムーズになります。

大家の本音と出口戦略——立ち退き交渉が長引くなら「売る」選択

最後に、大家側のいちばん奥にある本音を書きます。立ち退き交渉は、想像以上に消耗します。正当事由を組み立て、立ち退き料を交渉し、それでも納得してもらえなければ訴訟——という道のりを思うと、「そこまでして自分で建て替える価値があるのか?」と立ち止まる大家は少なくありません。私自身、保有物件の出口を考えるとき、何度もこの問いに直面しました。

ここで知っておいてほしい選択肢が、借主が入ったまま物件を売る「オーナーチェンジ」です。立ち退きを完了させてから更地で売る、あるいは空室にして売る——というのが王道に見えますが、立ち退き交渉のコストとリスクを抱えるくらいなら、借主が住んでいる状態のまま次のオーナーに引き継いでもらうほうが、トータルで得になるケースは実際にあります。立ち退きに勝つことがゴールではなく、自分の手残りを最大化することがゴールだからです。

「自分の物件は、立ち退きまでして建て替えるべきか、それとも今のまま手放すべきか」——この問いに正直に向き合うなら、まず出口の選択肢と数字を知ることから始めるべきです。リースバックやオーナーチェンジには見落としがちなデメリットもあるので、勢いで決める前に一度立ち止まって確認してください。

立ち退き交渉に疲れる前に、「売る」という出口も知っておく

立ち退き料・空室・訴訟リスクを抱え込む前に、リースバックやオーナーチェンジで手放した場合の手残りを大家目線で検証しました。業者の甘い言葉に乗る前に、デメリットから先に知っておきましょう。

大家が語るリースバックのデメリットを読む

売却を視野に入れるなら、まず「いくらで売れる物件なのか」を知るのが第一歩です。ただし査定の頼み方には落とし穴もあるため、不動産一括査定のデメリットを先に押さえてから動くと、業者ペースに巻き込まれずに済みます。なお、立ち退きで悩む物件が相続したマンションなら、保有・賃貸・売却の判断軸を整理した相続マンションを売る・貸す・持つの判断も参考になります。

よくある質問(立ち退き料Q&A)

Q. 大家は立ち退き料を払う義務がありますか?

立ち退き料の支払いは、法律で定められた絶対的な義務ではありません。ただし、大家側の正当事由が弱い場合、立ち退き料を支払うことで正当事由を補い、退去を実現するのが実務の現実です。「払わなくても出てもらえる」とは限らないため、結果として支払いが必要になる場面は多くあります。

Q. 立ち退き料がもらえないケースはありますか?

あります。定期借家契約の期間満了による退去、家賃滞納など借主側の契約違反がある場合、借主の自己都合での退去、建物が災害で倒壊・滅失した場合などは、立ち退き料が出ない、または大幅に減る可能性があります。

Q. 家賃7万円の場合、立ち退き料はいくらになりますか?

立ち退き料に法律上の相場はなく、家賃から自動的に金額が決まるわけではありません。居住用では家賃の数か月〜1年程度が目安として挙げられることもありますが、これはあくまで一例です。実際の金額は、引越実費・迷惑料を土台に、正当事由の強さや代替物件の有無など個別事情によって交渉で決まります。

Q. 立ち退き料は必ずもらえるのですか?

必ずもらえるとは限りません。立ち退き料は大家の正当事由を補うための金銭であり、立ち退きの理由や契約の種類によっては支払われないこともあります。一方で、大家都合の退去で正当事由が弱い場合は、相応の補償を求める交渉が可能です。

Q. 家主都合の立ち退きの相場はどのくらいですか?

家主都合であっても法定の相場はありません。一般的には移転実費と迷惑料を基に、居住用なら家賃の数か月〜1年程度が一例として語られることがありますが、店舗や事務所では大きく異なります。物件タイプ・立地・借主の事情で変動するため、単一の金額で断定はできません。

Q. 老朽化を理由に退去させられますか?

「古いから」というだけでは、正当事由として認められることは通常難しいです。倒壊の危険が高く建替えの必要性が強いといった具体的な事情まで求められます。老朽化を理由に退去を迫られても、無条件かつ無償で出ていく必要はなく、正当事由と立ち退き料の有無を確認することが大切です。

Q. 立ち退き料に税金はかかりますか?

受け取った立ち退き料は、その中身によって税務上の区分が変わります。権利消滅の対価部分は譲渡所得、事業の休業補填部分は事業所得など、それ以外は一時所得として扱われます(国税庁No.3155)。「すべて一時所得」とは限らないため、金額が大きい場合は税理士への確認をおすすめします。

まとめ:知っているだけで、立ち退きの景色は変わる

立ち退き料の話は、知らないと一方的に損をし、知っていれば対等に向き合える——その差がはっきり出るテーマです。大家として10年向き合ってきた私から、最後に要点をもう一度。

  • 大家は一方的に退去時期を決められない。正当事由(借地借家法28条)が必要。
  • 「老朽化」「家族が使う」だけでは正当事由として弱い。総合的に判断される。
  • 立ち退き料に法定の相場はなく、交渉で決まる。「家賃◯ヶ月」を鵜呑みにしない。
  • 定期借家・滞納・自己都合などでは立ち退き料が出ない・減ることがある。
  • 税金は中身ごとに区分される。大家の出口次第では譲渡費用にもなる。
  • 大家は、立ち退き交渉に疲れる前に「売る」という出口も選択肢に入れておく。

借りている側は、言われるままサインしないこと。貸している側は、「自分の物件だから自由にできる」という思い込みを手放すこと。どちらにとっても、立ち退きは「感情」ではなく「事実と数字」で向き合うべき場面です。個別の交渉は弁護士、税金は税理士という専門家の力も借りながら、納得のいく着地を目指してください。

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