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この記事の結論
海外でクレジットカードを使うと、その日の為替レートに「海外事務手数料」が上乗せされます。この手数料がここ2年で相次いで引き上げられ、2%台だった大手カードが3%台に入ってきました。
- 2026年10月8日時点、主要カードの率は1.60%〜3.85%。同じ買い物でも、どのカードで切るかで支払額が変わります
- 30万円の海外決済なら、1.60%と3.85%の差は6,750円。年に何度も海外に出る人ほど差が大きくなります
- そして年表の次の行はもう決まっています。三菱UFJニコスが2026年5月15日に再改定を告知し、Visa/Mastercardは税込4.50%へ(三菱UFJカードは2026年11月16日、NICOSカードは11月6日のご利用分から)
- やることは1つ。手元のカードの明細と会員規約で、自分のカードの率を確かめることです。この記事はその見方から解説します
筆者:外資系カード会社元営業・10年以上/FP2級。カードの「損得」は公式の一次情報と明細の数字だけで判断する派です。
海外旅行から帰って明細を見ると、現地で払ったはずの金額より請求がすこし多い。「レートのせいかな」で流していませんか。
実はそこには、為替レートとは別のコストが乗っています。それが海外事務手数料(カード会社によって「海外事務処理手数料」「外貨取扱手数料」などと呼び方が変わります)です。
私はカード会社で10年以上営業をしていましたが、お客様から「この明細の換算レート、ニュースで見たレートと違うのはなぜ?」という質問を何度も受けました。答えはほぼ毎回この手数料です。そして、この手数料がここ2年で立て続けに引き上げられていることは、あまり知られていません。
この記事では、①海外事務手数料の正体と明細での見方、②ここ2年の引き上げの実例(各社公式の告知ベース)、③主要カードの現行率、④旅行1回でいくら違うのかの計算、⑤現地で迷いがちな「円払いの罠」まで、公式の一次情報だけを根拠に整理します。率と改定日は全て2026年10月8日時点で各社公式ページを確認したものです。
海外事務手数料とは?明細では「換算レート」に隠れている
海外事務手数料とは、外貨でカード決済をしたときに、カード会社が円に換算する際の事務コストとして上乗せする手数料です。三井住友カードは公式ページで「外貨によるカード決済が行われた際、海外取引に関する事務処理費用として弊社が設定する手数料」と説明しています。
ポイントは、明細に「手数料 ○○円」と別の行で立つのではなく、換算レートに含まれてしまっていることです。明細ではおおむね次のような形で表示されます。
利用日 ○月○日/HOTEL ○○○○/100.00 USD/換算レート 155.43円/15,543円
この「換算レート155.43円」が、ニュースで見る為替レートと一致しない正体です。国際ブランドが決める基準レートに、カード会社の海外事務手数料率を加えたものが、あなたの明細の換算レートになります。
自分のカードの率を調べる場所は2つです。1つ目は会員規約。「海外利用代金の決済レート」といった条項に「レートに○%を加えたレートで円貨に換算します」という形で書かれています。2つ目は各社公式サイトのよくある質問(FAQ)で、「海外利用 手数料」で検索すると該当ページが出てきます。アプリやWeb明細で過去の海外利用分を開き、換算レートを当日の市場レートと見比べてみると、上乗せ分が体感できます。
もう1つ大事なのは換算のタイミングです。レートが決まるのは利用した日ではなく、売上データがカード会社(または国際ブランドの決済センター)に到着して処理された日。JCBは公式FAQで、換算日は利用日の3〜10日後になることが多いと案内しています。旅行中に円安が進めば、同じ買い物でも請求は膨らみます。
手数料の仕組み|「二重取り」ではなく、上乗せは1回だけ
「ブランドとカード会社に二重に取られているのでは?」と聞かれることがありますが、構造はシンプルです。
| 段階 | 誰が決める | 中身 |
|---|---|---|
| ①基準レート | 国際ブランド(Visa/Mastercard/JCBなど) | 売上処理日のブランド指定レート。市場レートに近い水準 |
| ②海外事務手数料 | カード発行会社 | ①に上乗せされる率。会員規約に記載。ここがカード会社ごとに違う |
つまり読者のみなさんが比べるべきは②だけです。①はどのカードでも大きくは変わりません。②はカード会社が会員規約で定めており、同じVisaブランドでも発行会社が違えば率が違います。「Visaだから何%」ではなく「どの会社が発行したカードか」で決まる。ここを取り違えている方が本当に多いです。
なお、この手数料はショッピング利用の話です。三井住友カードやJCBの公式案内のとおり、海外キャッシング(海外ATMでの現金引き出し)には海外事務手数料はかからず、代わりに利息がかかる別の仕組みになっています。また三井住友カードは「日本語表記のインターネットサイトや通信販売などであっても、外貨でのお取引となる場合があります」と注意しています。海外に行かなくても、外貨建てのネット決済ならこの手数料はかかります。
ここ2年の値上げ年表|「2%台→3%台」への引き上げが相次いだ
本題です。この手数料は長い間「2%前後」が相場でしたが、2024年から2025年にかけて、大手が立て続けに引き上げました。各社が公式告知で挙げる理由はほぼ共通で、「海外取引に関連するコストの増加」です。
公式の告知ページで確認できた改定を、適用開始日の順に並べます。
| カード会社(対象ブランド) | 改定前 | 改定後 | 適用開始 |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJニコス(Visa/Mastercard) | 2.20%(税込) | 3.85%(税込) | 2024年8月13日請求分〜(NICOS/JAカードは8月27日〜) |
| 三井住友カード(Visa/Mastercard) | 2.20%(税込) | 3.63%(税込) | 2024年11月1日到着売上〜 (到着売上=売上データがカード会社に届いた分。公式表記のままです) |
| セゾンカード(Visa/Mastercard) | 2.20%(税込) | 3.85%(税込) | 2024年12月4日処理分〜(JCBは2.15%→3.85%、AMEXは2.00%→3.85%) |
| 楽天カード(Visa/Mastercard/JCB/AMEX共通) | 2.20%(税込) | 3.63%(税込) | 2025年3月1日〜 |
| エポスカード(Visa) | 2.20% | 3.85% | 2025年7月1日〜 |
| アメリカン・エキスプレス(アメックス発行の個人カード・ビジネス・カード) | 2.0% | 3.5% | 2025年8月1日処理分〜(コーポレート・カードは10月1日〜) |
出典:各社公式告知(三菱UFJニコス2024年2月29日付・三井住友カード改定案内・セゾンカード2024年9月18日付・楽天カード2024年12月17日付・エポスカード2025年5月30日付・アメリカン・エキスプレス2025年4月21日付(6月24日改訂)のお知らせ)。2026年10月8日時点で各公式ページを確認。
並べると流れがはっきり見えます。2024年夏から2025年夏までの約1年で、大手5社が2.2%前後から3.6〜3.85%へ、おおむね1.5倍に引き上げたということです。1回の旅行では気づきにくい変化ですが、1.5倍は決して小さくない数字です。アメリカン・エキスプレス(アメックスが自ら発行するカード)も、2025年8月1日から外貨取扱手数料を2.0%から3.5%へ上げました。15,000円分の外貨の利用で手数料が300円から525円になる、という例をアメックス自身が出しています。
一方で、注意もあります。JCBは率こそ最安ですが、海外では地域によってVisa・Mastercardより使える店が少ないのが実情です(アジアやハワイでは強く、欧州などでは限られる傾向)。「海外用はVisa/Mastercardで率の低い1枚を軸に、JCBは使える場面で併用」が現実的です。また、全社が同じ動きをしたわけではありません。JCB本体発行のカードは2026年10月8日時点も公式FAQで1.6%のままです。三菱UFJニコスは2024年の改定ではVisa/Mastercardだけを引き上げ、AMEX/JCBブランドを据え置いていましたが、2026年5月15日の告知でその据え置きは終わりました(詳しくは次の段落)。つまり「持っているカードの発行会社とブランドの組み合わせ」を見ないと、自分の率は分かりません。同じ財布の中に1.6%のカードと3.85%のカードが同居している、というのはごく普通に起きています。
こうした「気づきにくい改定」はこの手数料に限った話ではありません。当ブログでは税金のクレジットカード払いの損益分岐のように、手数料と還元の境目が動く話題を継続して追いかけています。改定は会員向けのお知らせページにひっそり載るだけのことが多いですが、公式告知には必ず日付が書いてあります。公式告知には必ず適用日が書いてあるので、年に1回、明細と一緒に見直せば十分です。
次の行はもう決まっている|三菱UFJニコスが2026年11月に4.50%へ
この年表には、まだ表に入っていない次の行があります。三菱UFJニコスは2026年5月15日、海外事務手数料の再改定を告知しました。改定後はVisa/Mastercardが税込4.50%、JCBブランドが税込4.34%、American Expressブランドが税込4.30%。適用は三菱UFJカードが2026年11月16日、NICOSカードが11月6日のご利用分からです。上の表の上限だった3.85%は、11月に4.50%へ動きます。
ここで見落とされやすいのが、同じ告知に付いている「一部のカードは対象外」という但し書きです。そこにJALカードが名指しで書かれています。原文は「JALカードの手数料について、アメリカン・エキスプレス®は改定により3.43%(税込)となります。なお、Visa・Mastercard®は、従来通り3.63%(税込)を加算したレートで円貨に換算させていただきます」。つまりJALカードのVisa/Mastercardは4.50%の対象ではなく、3.63%のままです。同じ「三菱UFJニコス発行」でも、券面によって行き先が違います。
JALカードの値上げを起点にした全社の改定年表(最新告知の追跡版)は姉妹記事で更新しています。
主要カードの現行率一覧|同じ買い物で率はここまで違う
2026年10月8日時点で、各社の公式ページ(会員規約・FAQ・告知)で確認できた現行率です。公式で確認できたカードだけを載せています。
| カード会社(ブランド) | 現行率 | 現行率の適用開始 |
|---|---|---|
| JCB(JCB本体発行) | 1.60%(非課税) | 据え置き(公式FAQで2026年10月8日時点も1.6%と確認) |
| アメリカン・エキスプレス(プロパー) | 3.5% (税区分の明記なし・公式表記のまま) |
公式サポートページで現行率のみ確認 |
| 三井住友カード(Visa/Mastercard) | 3.63%(税込) | 2024年11月1日〜 |
| 楽天カード(4ブランド共通) | 3.63%(税込) | 2025年3月1日〜 |
| セゾンカード(Visa/Mastercard/JCB/AMEX) | 3.85%(Visa/Mastercardは税込表記) | 2024年12月4日〜 |
| 三菱UFJニコス(Visa/Mastercard) | 3.85%(税込) | 2024年8月〜(AMEX/JCBブランドは2.00%(税抜)で据え置きと公式明記) |
| エポスカード(Visa) | 3.85% | 2025年7月1日〜 |
| (参考)Revolut等の両替アプリ | 0%〜1.0% 条件つき※ |
仕組みが異なる(本文参照) |
2026年10月8日時点・各社公式ページ確認。提携カードや法人カードは条件が異なる場合があります。必ずお手元のカードの会員規約でご確認ください。
※Revolut等の両替アプリはクレカの海外事務手数料と仕組みが異なります。平日・無料枠内(スタンダード会員は月30万円)なら0%、超過0.5%・週末+1.0%・Visaのクレカからのチャージは別途1.7%(Revolut公式・2026年10月8日時点)。詳しくは本文のRevolut節へ。
幅としては1.60%〜3.85%。最安と最高で2.25%の差があります。「どのカードも似たようなもの」ではなくなった、というのがここ2年の変化です。
カード名で引く|イオン・dカード・PayPayカード・JAL・ANAなどの海外事務手数料
上の表は大手7社です。ここでは、カード名で探している方のために、表に無いカードも並べます。2026年10月14日に各社の公式ページ(FAQ・お知らせ・会員向けの案内)で確かめた率です。同じカード名でも、ブランドと発行会社で率が変わります。カード裏面に書かれた発行会社と合わせて見てください。
外貨で1万円使うと、手数料はいくら?(率の段ごと)
同じ1万円でも、いちばん低い段と高い段で約2.8倍の差です。
1.60%=160円
イオンカード(Visa・Mastercard・JCB)/JCBが発行するカード/JAL・ANA・ビュー・リクルートのJCB
2.00%=200円
ダイナースクラブ(JAL・ANAのダイナースも)
3.50%=350円
アメリカン・エキスプレス(アメックスが発行するカード・ANAアメックス)
3.63%=363円
楽天カード/三井住友カード(Visa・Mastercard)/JALカードのVisa・Mastercard
3.85%=385円
エポス・セゾン・PayPayカード・dカード・ライフ・ビュー(Visa・Mastercard)
4.50%=450円
三菱UFJカード・NICOSカード(Visa・Mastercard)=11月の利用分から(3.85%から上がる)
2026年10月14日に各社の公式で確かめた率。同じカード名でもブランドと発行会社で率が変わります(下の表)。エムアイカードのアメックスは12月9日処理分まで0.25%、JALカードのアメックスは2027年1月請求分まで2.00%(どちらも改定が決まっています)。
| カード名 | 海外事務手数料(ブランド別・→は決まっている改定) | 今の率の始まり・改定の日 |
|---|---|---|
| イオンカード(Visa/Mastercard/JCB) | 1.60%(3ブランドとも同じ) | 公式FAQ(2026年8月13日更新)で確認 |
| JCBが発行するJCBカード(JCBカードWなど) | 1.60% | 公式FAQ(2026年6月2日更新)で確認 |
| JALカード | JCB(JALカードSuica・OPクレジットを含む)は1.60%、ダイナースは2.0%、Visa・Mastercardは3.63%、アメックスは2.00%→3.43% | アメックスの3.43%は2027年1月ご請求分から。Visa・Mastercardは三菱UFJニコスの4.50%への改定の対象外(3.63%のまま) |
| ビューカード | JCBは1.60%、Visa・Mastercardは3.85% | Visa・Mastercardは2024年12月5日処理分から |
| ANAカード | ANA JCB(発行はJCB)は1.60%、ANAダイナースは2.00%、ANAアメックスは3.5%、ANA VISA・ANAマスター(発行は三井住友カード)は3.63% | 率は発行会社の率と同じ。発行会社はANAの「クレジットカード発行会社お問い合わせ先」で確認 |
| リクルートカード | JCB(発行はJCB)は1.60%、Visa・Mastercard(発行は三菱UFJニコス)は3.85%→4.50% | 4.50%は2026年11月のご利用分から(三菱UFJニコスの改定。11月6日か16日かは会員の区分で決まります) |
| ダイナースクラブカード | 2.00% | 2025年12月1日売上データ処理分から(1.30%から)。コンパニオンカード(Mastercard)は3.63% |
| 三菱UFJカード・NICOSカード | アメックスは2.00%→4.30%、JCBは2.04%→4.34%、Visa・Mastercardは3.85%→4.50%(改定後はいずれも税込) | 改定後の率は、NICOSカードは2026年11月6日、三菱UFJカードは11月16日のご利用分から |
| アメリカン・エキスプレス(アメックスが発行するカード) | 3.5% | 2025年8月1日処理分から |
| 三井住友カード | Visa・Mastercardは3.63%、銀聯は2.50% | 2024年11月1日到着売上から |
| 楽天カード | 3.63%(4ブランド共通) | 2025年3月1日から |
| PayPayカード | 3.85%(Visa/Mastercard/JCB) | 2025年3月10日以降の売上到着分から(JCBは1.60%から) |
| dカード | 3.85%(Visa/Mastercard) | 2025年12月1日以降に到着する売上から |
| セゾンカード | 3.85%(Visa/Mastercard/JCB/アメックス) | 2024年12月4日処理分から |
| ライフカード | 3.85%(Visa/Mastercard/JCB) | 2024年12月1日のご利用分から |
| エポスカード | 3.85%(Visa) | 2025年7月1日のご利用分から |
| エムアイカード | Visaは3.85%、エムアイカード プラス・アメリカン・エキスプレスは0.25%→3.85% | Visaは2025年11月6日処理分から。アメックスの3.85%は2026年12月10日処理分から |
2026年10月14日に各社の公式ページで確認。税込・非課税の表記は各社の公式どおりです。エムアイカードのアメックスは、2026年12月9日処理分までは0.25%で、大手7社のどの率よりも低い例外です。出典:イオンカード・JCB・エポスカードの公式FAQ、JALカード「海外でのご利用について」と2026年6月12日のお知らせ、ANA「クレジットカード発行会社お問い合わせ先」、リクルートカード「カードの機能」、ビューカード・ライフカード・PayPayカード・dカード・ダイナースクラブ・エムアイカード・三菱UFJニコスの改定のお知らせ、アメリカン・エキスプレス・三井住友カード・楽天カード・セゾンカードの海外利用の案内。
「エポスの海外事務手数料は安い」はもう古い
検索でよく見かける「エポスカードは海外に強い」という評判は、率が2%台だった頃の情報が残っているケースが目立ちます。上の表のとおり、エポスカードの外貨ショッピング事務手数料は2025年7月1日から3.85%になりました(公式お知らせ・2025年5月30日付)。エポスカードは海外旅行保険や年会費無料といった別の強みで語るべきカードで、その中身はエポスゴールドのインビテーション解説記事で詳しく書いています。海外旅行保険が付く条件はエポスカードの海外旅行保険の記事にまとめています。手数料の一点だけで、古い情報のまま選ぶのはもったいないです。
計算例|30万円の旅行決済で差はいくら?
率の差を金額にしてみます。ハワイ旅行でホテル・食事・買い物あわせて30万円分をカード決済したとします(基準レート換算後の円額を30万円とした概算です)。
| 手数料率 | 手数料額(30万円決済) | 最安1.60%との差 |
|---|---|---|
| 1.60% | 4,800円 | ― |
| 2.20%(引き上げ前の旧相場) | 6,600円 | +1,800円 |
| 3.63% | 10,890円 | +6,090円 |
| 3.85% | 11,550円 | +6,750円 |
整理するとこうなります。
- 旅行1回(30万円)なら、旧相場2.20%と現行3.63%の差は4,290円。「気づかないうちに払っている」水準です
- 最安1.60%と最高3.85%の差は6,750円。空港での食事1〜2回分が、カードの選び方だけで消えます
- 年3回海外に出る人(年90万円決済)なら、1.60%で14,400円、3.85%で34,650円。年間差は20,250円です
1回では小さく、積み重なると大きくなる。カード会社の手数料設計はだいたいこの形をしています。だからこそ、渡航頻度が高い人ほど「どのカードで切るか」を決めておく価値があります。
DCCの罠:「日本円で支払いますか?」には現地通貨で
海外事務手数料を気にする人ほど引っかかりやすい落とし穴が、もう1つあります。DCC(ダイナミック・カレンシー・コンバージョン)です。
海外の店やホテル、海外サイトの決済画面で「日本円で支払いますか?それとも現地通貨?」と聞かれることがあります。円建ての金額が見えると安心なので、つい円を選びたくなりますが、ここで円建てを選ぶと店側(DCC事業者)が独自に設定したレートで換算されます。このレートには一般に大きめの上乗せが含まれており、カード会社の海外事務手数料より高くつくケースが少なくありません。
迷ったらこれだけ
- 支払い時に通貨を聞かれたら「現地通貨(Local currency)」を選ぶ
- 端末やレシートに円額とレートが出ていたら、DCCが適用されているサイン。その場で現地通貨への変更を頼めます
- 円建てを選んだ場合、カード会社の海外事務手数料の話ではなくなるため、明細を見ても内訳の検証がしづらくなります
「海外事務手数料が高いから円建てで払えば回避できる」という理解は逆です。円建て(DCC)を選ぶと、多くの場合もっと不利なレートに乗り換えるだけになります。手数料の議論は、現地通貨で払うことを前提に始まります。
海外へ出る前に確かめること3つ
現地通貨で払うことのほかに、出発前に見ておくと、帰ってからの明細で慌てずに済むことが3つあります。
- 持っていくカードの率を、ブランドごとに確かめる。同じJALカードでも、JCBは1.60%、Visa・Mastercardは3.63%です(JALカードと三菱UFJニコスの公式)。2枚持っていくなら、どちらを先に出すかを決めておくだけで差が出ます
- 改定日の近くの旅は、使った日ではなく処理された日で率が決まる。たとえば三菱UFJニコスの改定は2026年11月のご利用分から、エムアイカードのアメックスの改定は12月10日処理分からです。エムアイカードは、12月10日より前に使った分でも、処理の時期によっては新しい率になることがあると案内しています
- 予約を取り消しても、手数料がかかることがある。エポスカードの公式FAQには「解約や取消の場合でも、事務処理費として3.85%が発生します」とあります。海外のホテルを外貨で前払いして取り消すときは、手元のカードの会員規約で取り消しの扱いを見ておくと安心です
年に何度も海外に出る人の考え方
ここまでの材料をどう使うか。私の考え方は次の3段階です。特定のカードを作りましょうという話ではありません。手元のカードを知り、使い分けを決めるだけで完結します。
- ①手元のカードの率を確認する。会員規約の「海外利用代金の決済レート」に関する条項、または公式FAQに必ず載っています。この記事の表にないカードでも、確認先は同じです
- ②海外決済用の1枚を決めておく。複数枚持っているなら、率が低いカードを海外用と決めておくだけで、上の計算例の差がそのまま浮きます。ポイント還元率と手数料率の差し引きで考えるのが正確です(還元1%・手数料3.85%なら、実質負担は2.85%相当という見方)
- ③金額が大きい決済ほど気を配る。手数料は率でかかるので、ホテル代のような大きな決済ほど差が出ます。数百円の買い物で悩む必要はありません
海外のホテル代は1回の決済額が大きく、現地決済を選ぶと外貨建てになるのが普通です。決済額が大きいものほど、この手数料の差がそのまま金額の差になります。
逆に、海外渡航が数年に1回という方は、この手数料のためにカードを増やす必要はありません。1回あたりの差は数千円です。それよりもDCCで円建てを選ばないことと、明細の換算レートを一度見てみることのほうが、ずっと費用対効果が高い行動です。
RevolutやWiseのような「両替アプリ」なら手数料ゼロ?
読者の方からも「Revolutはどうなの?」という質問をいただきました。結論から言うと、平日に必要な分を両替しておけば、コストはクレジットカードの3%台よりかなり安くできる構造です。外貨口座から直接支払うため、クレカの海外事務手数料にあたる上乗せがそもそもありません。
ただし、Revolut公式の料金ページ(2026年10月8日時点)には条件が明記されています。
- 無料の両替枠は月30万円まで(スタンダード会員)。超えた分には0.5%の為替手数料
- 週末は+1.0%(ニューヨーク時間の金曜17時〜日曜18時は市場時間外の上乗せ)
- チャージ手段に注意。Visaブランドのクレジットカードからのチャージは1.7%の手数料。ここでクレカを使うと、手数料を避けたつもりが同じだけ払う本末転倒になります(国内発行のデビットカードなら無料)
もう一つの現実として、ホテルのチェックインやレンタカーではデポジット(与信の仮押さえ)としてクレジットカードの提示を求められる場面が残ります。プリペイド型では通らないことがあるため、「決済は両替アプリ、保証はクレカ」の併用が現実的な着地です。Wiseなど同種のサービスも考え方は同じで、使う前に公式の料金体系(無料枠・時間外・チャージ手数料)を確認してください。
現地で「現金が下ろせない」——チャージ元の落とし穴(WiseとRevolutで真逆)
手数料の話より先に知っておいてほしいことがあります。両替アプリに入れたお金が、そのままATMで現金にできるとは限りません。しかもWiseとRevolutで、扱いが正反対です。
Revolut:クレカで入れたお金は、ATMで下ろせません
Revolutの日本の個人利用条件に、条文としてこう書かれています。
クレジットカード、デビットカード又はプリペイドカードで入金(チャージ)した資金については、カード支払い(お買い物)には使うことができますが、現金の引き出し及び送金を行うことはできません。
読み飛ばしやすいところですが、デビットカードも同じ扱いです。「クレカはダメでもデビットなら大丈夫」という説明をネットで見かけますが、Revolut公式ブログに「2024年2月26日付のデビットカードからチャージされた資金の取り扱い方の変更に伴い、一部内容を更新いたしました」とあり、いまは対象に含まれています。古い記事を信じたまま現地に立つと、屋台やチップ用の現金が作れません。
では、どうすれば現金にできる残高が作れるのか。公式ヘルプが3つ挙げています。
- 銀行送金によるチャージ
- 他のRevolut利用者からの送金の受け取り
- メタルプランのキャッシュバックの受け取り
実務的には「銀行送金でチャージする」の一択です。渡航前にここだけ済ませておけば、現地で慌てずに済みます。
なお「カードで入れたお金は無駄になる」わけではありません。公式ヘルプによれば、カード決済・有料プランの月額・アプリ内購入・貴金属取引・外貨両替には使えます。さらに支払いのときは現金化できない残高から先に減る設計になっていて、これは「ATMや送金を便利に使えるようにするため」だとRevolut自身が説明しています。よくできた仕組みです。
Wise:そもそもクレジットカードから入金できません
一方のWiseは、話がまったく違います。日本円の入金に関する公式ヘルプにこうあります。
クレジットカードでの入金もできません。お客様自身の銀行口座からの銀行振込またはデビットカードによる入金が可能です。現金による入金や第三者による支払いは受け付けておりません。
つまりWiseでは「クレカでチャージして詰む」という事態がそもそも起きません。選択肢に無いからです。そのかわり、入れられるのは自分名義の銀行口座からの振込か、デビットカードの2つだけ。家族名義の口座からは入れられません。
そしてWiseの側には「入金元によって使い道が変わる」という決まりは見当たりませんでした(公式ヘルプ・日本向け利用規約を確認)。ここがRevolutとの決定的な違いです。
デビットで入金しようとして断られたら
Wiseは、カード払いが拒否される理由の一つを公式ヘルプでこう説明しています。
一部の銀行では、カード決済を現金の引き出しとして扱います。これは、口座に十分な残高がある場合でも、1日の現金引き出し限度額が支払い拒否の理由となっている可能性があることを意味します。
アプリ側が止めているのではなく、カードを出した側の扱いだということです。カード会社にいた立場から補足すると、カード会社は「カードの枠から現金が出る形」を強く警戒します。資金移動サービスへの入金は、その線引きに触れやすい取引です。断られたら、銀行振込に切り替えるのが一番早いです。
覚えておきたい数字
- RevolutのATM無料枠(月あたり)=スタンダード25,000円/プレミアム50,000円/メタル100,000円。超えた分は2%(公式ヘルプ)
- Revolutの引き出しは1回100万円まで・24時間で£3,000相当まで。この上限は引き上げできません
- Revolutの残高の保有上限は100万円(利用条件に明記)。いくらでも入れておける財布ではありません
- Wiseカードで日本国内のATMから引き出せるのは、イオン・E-net・デイリーヤマザキがほぼ中心(Wise英語ヘルプ)。帰国後に使うつもりなら知っておいたほうがいい制限です
渡航前のチェックはこれだけです。「出金に使う分は、銀行送金で入れてあるか」。ここさえ押さえておけば、現地のATMの前で焦ることはありません。
※本節は2026年10月8日時点の各社公式ヘルプおよび利用規約に基づきます。入金手段や手数料の条件は変更されることがあるため、渡航前に必ず最新の公式情報をご確認ください。Revolutは前払式支払手段ではなく、関東財務局に登録された第二種資金移動業者(REVOLUT TECHNOLOGIES JAPAN株式会社・登録番号第00060号)が提供しています。
同じ「両替アプリ」の枠で、2026年4月27日に日本でのサービスを始めたトラベルウォレット(Travel Wallet)という選択肢も出てきました。韓国発のサービスで、日本では株式会社トラベルウォレットJAPANが前払式支払手段(第三者型)発行者として提供しています(関東財務局長第00794号)。発行するTravel PayカードはVisaのプリペイドカードで、年会費・発行手数料・チャージ手数料はいずれも無料です。
手数料の建て付けが少し変わっています。公式サイトは海外決済について「一般的に3〜4%程度の手数料が掛かる海外決済の決済手数料が、トラベルウォレットなら完全無料です」と明記しています。つまりこの記事で扱ってきた海外事務手数料にあたる上乗せは、決済時にはかかりません。ただし、ここで話を止めると読者が損をします。手数料には決済手数料とは別に両替手数料があり、こちらは通貨によって変わるからです。
「手数料0%」を鵜呑みにしないための条件
- 両替手数料が0%なのは韓国ウォンと基軸通貨だけ。公式サイトの注記に「その他の通貨については、0.25%〜2.5%の両替手数料が適用されます」と書かれています。行き先の通貨次第でコストは変わります
- チャージできる残高の上限は20万円。使って減れば追加チャージできますが、為替変動で残高が上限を超えると、超過分が一時的に使えなくなることがあると公式が注意しています
- 現金への両替はできません(公式明記)。前払式支払手段としての登録なので、現金化や送金ができない建て付けです
- 対応は46通貨(71か国)。公式は「200カ国以上、約1億店舗で利用可能」としつつ、注記で「当社で未取扱いの通貨国ではご利用いただくことができません」と限定しています
- 利用は18歳以上で、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認が必要です(銀行口座の新規開設は不要)
決済のコストだけを見れば、クレカの3%台より有利になりうる構造ではあります。ただし残高上限20万円と現金化不可という設計上、ホテルのチェックインやレンタカーのデポジットをこれ1枚でまかなうのはやはり無理があります。上で書いた併用の考え方は、このサービスでもそのまま当てはまります。
トラベルウォレットの手数料率は公式リリースに「2026年4月時点のもの」と注記があり、変更されうるものです。また日本版アプリは韓国版とは別アプリで、韓国版の手数料条件はそのままは当てはまりません。利用前に必ず日本公式サイト(travel-wallet.co.jp)とアプリ内の最新情報をご確認ください。
よくある質問
Q1. 海外事務手数料とは何ですか?
外貨でカード決済したときに、カード会社が円へ換算する際に上乗せする手数料です。明細では独立した行ではなく「換算レート」に含まれる形で表示されます。国際ブランドの基準レートにカード会社所定の率を加えたものが、明細上の換算レートになります。率は発行会社ごとに会員規約で定められています。
Q2. 手数料はいつのレートで計算されますか?
利用日ではなく、売上データが処理された日のレートが使われます。JCBの公式FAQでは利用日の3〜10日後になることが多いと案内されています。このため、同じ店で同じ日に使っても、カードによって換算日と請求額がすこし変わることがあります。
Q3. 海外事務手数料が無料のクレジットカードはありますか?
一般的なクレジットカードでは、外貨決済に海外事務手数料がかかるのが原則です。RevolutやWiseのような両替アプリは外貨口座から直接支払うためこの手数料自体がありませんが、無料両替枠の上限や週末の上乗せ、クレジットカードからのチャージ手数料などの条件があります。ホテルのデポジットなどでクレジットカードが必要な場面も残るため、置き換えではなく併用が現実的です(本文で詳しく解説しています)。
Q4. なぜ各社そろって値上げしているのですか?
各社の公式告知では「海外取引に関連するコストの増加」が共通の理由として挙げられています。2024年夏から2025年夏にかけて、三菱UFJニコス・三井住友カード・セゾンカード・楽天カード・エポスカードが相次いで2.2%前後から3.6〜3.85%へ改定しました。アメリカン・エキスプレスも2025年8月1日に2.0%から3.5%へ上げました。
Q5. 日本にいても海外事務手数料を取られることはありますか?
あります。三井住友カードは公式に「日本語表記のインターネットサイトや通信販売などであっても、外貨でのお取引となる場合があります」と注意しています。海外の航空会社・ホテル予約サイト・アプリ課金などで決済通貨が外貨なら、国内からの利用でも手数料の対象です。
Q6. 現地で「日本円で支払いますか?」と聞かれたらどうすればいいですか?
現地通貨を選ぶのが基本です。円建て(DCC)を選ぶと、店側が設定した独自レートで換算され、カード会社の海外事務手数料より高くつくことが多いためです。レシートに円額とレートが印字されていたらDCCのサインなので、その場で現地通貨払いへの変更を頼めます。
Q7. 海外事務手数料が安いクレジットカードはどれですか?
2026年10月14日に各社の公式で確かめた範囲では、改定の日が決まっていない率のうち、イオンカード(Visa・Mastercard・JCBとも1.60%)と、JCBが発行するカード(1.60%)が最も低い水準です。JALカード・ビューカード・ANAカード・リクルートカードも、JCBブランドなら1.60%です。ダイナースクラブカードは2.00%です。エムアイカードのアメリカン・エキスプレスは2026年12月9日処理分まで0.25%で、12月10日処理分から3.85%です。率は発行会社とブランドの組み合わせで決まるので、カード裏面の発行会社で確かめてください。
Q8. 楽天カード・イオンカード・JCB・エポスカード・三井住友カードの海外事務手数料はいくらですか?
楽天カードは3.63%(4ブランド共通)、イオンカードは1.60%(Visa・Mastercard・JCB共通)、JCBが発行するカードは1.60%、エポスカードは3.85%、三井住友カードはVisa・Mastercardが3.63%です。いずれも2026年10月14日に各社の公式で確かめた率です。ほかのカードは本文のカード名の表にまとめています。
まとめ:明細の1行を、一度だけ確かめてください
最後に要点をまとめます。
- 海外事務手数料は、外貨決済の換算レートに上乗せされるカード会社の手数料です
- 2024年夏〜2025年夏の約1年で、大手5社が2.2%前後から3.6〜3.85%へ引き上げました。理由は各社共通で「海外取引コストの増加」です。アメリカン・エキスプレスも2025年8月に2.0%から3.5%へ上げました
- 2026年10月8日時点の主要カードの幅は1.60%〜3.85%。30万円の決済で最大6,750円の差になります
- 現地では「円払い(DCC)」を選ばない。これは率の比較以前の大前提です
この記事で新しいカードを作る必要はありません。次にやることは1つだけ。直近の明細で「換算レート」の行を見て、手元のカードの率を会員規約で確かめることです。次の旅行の前に5分で終わります。その5分が、旅行のたびに数千円を守ってくれます。
当ブログでは、こうしたカードの手数料・還元の改定を今後も定点で追いかけます。改定情報の追い方の実例は税金のカード払い記事もあわせてどうぞ。
本記事の手数料率・改定日は2026年10月8日時点で各社公式サイト(告知・FAQ・会員規約)を確認したものです。最新の率は必ずお手元のカードの公式情報でご確認ください。


